テノ森×まち家族メンバー 対談

津屋崎の森のオアシス、木工房「テノ森」を運営する細井護さんと、まち家族で、「旧糀屋」にて対談しました。まち家族を立ち上げた山口と古橋、世界一周の旅後に津屋崎に移り住んだ共通点を持つ細井さんと廣橋、4人の対談に見えた、ありたい日常の風景とは―

テノ森は、木工の講習会っていってるけど、トレッキングみたいな感じなんです

古橋)最近どんなこと考えてますか?なかなかゆっくり話すことないから。

細井)なんかね、何も考えてないっていうことが、この前分かって。僕ちゃんと考えてると思ってたんだけど、性格分析っていうのをやってみたら、僕何も考えてなかったんですよ。

山口)どんな分析?それ(笑)

細井)でも、だからテノ森ができたんだと思うんです。思いついてから行動するまでの時間が、考えてないから早くできちゃうんだよね。

山口)なるほど。未来は見えない方がいいのかもしれないね。

細井)面白くないんですよ、設計図があると。テキスト作って、毎回それでやっていくっていうのが、つまんない。だからその人が来てちょっと話して、「あ、この人だったら木の器作るのにこんなペースでやっていこう」とか「木の大きさはこのぐらいにしよう」とか、開けてみて、じゃあどうやっていこう、みたいなのが、ずっと7年間続いてて。毎回違って、毎回大変なんです。

古橋)分かるなあ。

細井)図面も一応書いてあるんですよ。でもね、だいたいどっか間違ってるの。毎回「ここ間違ってんですよね」って言ってるけど、不便なままになってるの。だからその都度、え、どうだったっけって悩みながら、作る人と一緒に作って。そのうち参加してる人が、「あ、この人に任せちゃダメだ」って思って、自分で考えてくれる。

古橋)その方が参加する方も生き生きするでしょうね。

細井)サバイバルみたいな感じで。

古橋)仲良くなったりもするし。

細井)さっちゃんさあ、ネパール行ったとき、インドのビザ取りに行った?

廣橋)あ、いや、そこ行く前にもう(コロナ禍で)ロックダウンになっちゃって。

細井)あーそっか。そこ、最悪なのね。全然進まないし書類もどこにあるか教えてくれなくて。行った人みんな、書類どこだって言って、みんなチームになっていくの。全然知らない国の人が、あそこにあるぞとか教えてくれて。

古橋)面白いなそれ。予定がスムーズにいってしまったら、ドラマは生まれないって言うか、そこに失敗とかあるから、人間のアドリブ力が引き出されるって言うか。

細井)テノ森はね、木工の講習会っていってるけど、トレッキングみたいな感じなんですよ。僕は、誰にも先生とは呼ばせなくて、トレッキングガイドみたいな感じ。あの山登りたいって言ったら「いいですね、行きましょう」って。そこで、先に登って行って道整えておくとか、綺麗にしておくとか、そういうことはあまりしたくなくて。でも、ちゃんとみんなに最後まで付き合うの。で、登った時には、受講してくれた人は、「やっぱり俺はすごかった。こんなガイドでもここまで来れた」って思える。そういう面白さがあるんじゃないかな。

古橋) ここでの滞在では、そういうことがいっぱいおこって欲しい。一番お金をいただくには、美しくして、いらっしゃいませって言って、みたいな方が、ラグジュアリーな気持ちになれるかもしれない。でもそういうのじゃなくて。

山口) 「隙がある」とか「雑な部分がある」ってことが、家族なんだね。それがなくなると商売になっちゃう 。

古橋)そこに大金は払われるのかもしれないけど、とても息苦しいものになってしまう可能性も、はらんでいて。もちろんある時にはそれはとても価値があるものかもしれないけど、そっちの方向は目指してない。ほんとの価値は、そこじゃないっていうことに、来てくれる人と一緒に気づけたら、すごく良いものになるんじゃないかなって思うんです。

細井)とは言いつつね、全部の講習会の中には、絶対ここでこういう深い時間を過ごすんだっていうのを見つけてあるんです。でもそのことは言う必要はなくて、そんなことを散りばめてたことも自分が忘れてるくらいの方がいい。で、「あ~、ここでこんな思いするんですよね」みたいなのを、一緒に再発見していく面白さ。そういうのがないのは講習会に入れてないんです。

「日常的に作る」っていう経験がもっとあったほうがいい。

細井)なんか、おでんみたいな木工っていいと思うんだよね。おせち料理みたいなのもいいんだけど。椅子作ってみようか、次はこうしてみようかって、ベーシックだけど工夫していくみたいな。日常的に作る経験がもっと豊富にあった方がいい。だからテノ森のラインナップもね、すごいものが揃ってるというより、このトレッキングコース行ったら面白い発見が散りばめられている、そんなのができたら面白い。完成度はもちろん高くするんだけど、そこが一番の目的ではない。

山口)かっこいい!

細井)山口さんが学習机作った時も、僕が「こうしましょう」ってやると失敗して。山口さんが「私がやります」ってやると、すごい綺麗にいったりしてね。

山口)楽しかったなあ。あれからもう4年。

細井)作ってる時、山口さん全然違いましたよ。目が。すごい集中してやってましたよ。

山口)大好きですよ、ああやって集中するの。

古橋)僕は、どっか出ちゃうんですよ、やすりがけ1~2回やって、もういいかみたいな。

細井)ははは。そういうの出ちゃうんですよね。でもそれがいいですよね。自分が作った器、ちょっとカスカスになったのをオイル染み込ませると、なんか、よしって思う。いいよね。

一番難しいのは、申し込むこと。来てみてから考える。

細井)申し込むまでが、大変なんだよね。この講習会で何が一番難しいですかって、よく聞かれるんだけど、一番難しいのは申し込むこと。あとはもうなんとかなる。世界一周だってそうだったでしょう?

廣橋)ほんとそう!!!行くって決めるまでが一番大変だった!

山口)さっちゃん、パスポート忘れたらしいですよ。

細井)どこに?

廣橋)実家に

古橋)マジで!?

廣橋)あゆちゃん(山口さん娘、当時小3)が福間駅でお見送りの時に「パスポート持った?」って聞いてきて、「あ、忘れた!」って(笑)

古橋)ええー!

廣橋)あの時言ってくれてなかったら、成田からアラスカまでのチケットがパーになってた。

山口)それで実家から、東京の宿に送ってもらったんだって。

廣橋)これに乗らなきゃもう空港のチェックインに遅れるっていう、最後の電車の発車時刻ぎりぎりに受け取って、そのまま駅にダッシュして、電車に飛び乗って。

古橋)うわーそれ届いたのも奇跡やね。

細井)でもそうやってさ、忘れられない一瞬、あゆみちゃんの「パスポートもった?」って、その一つの言葉を、1年経っても覚えてるってすごいよね。郵便だって今までにたくさん受け取ってるのにさ、ねえ。

廣橋)あの時郵便屋さんが届けてくれた、ゆうパックの封筒、超嬉しかった(笑)

細井)旅って、不完全なんだよね。だから忘れられないんだよね。

古橋)そうですよね、何が起こるかわかんないから生きられる。全部わかってたら生きる必要ないですもんね。

細井)やっぱり、自信持って一緒にこのトレッキングルート行きましょうよって言える。でもそれをルーティンワークにはしたくない。それだと僕がつまんなくなるから。来てみてから考えたらいいんですよ。

山口)ほんとね、来てみてから考える。

細井)何か引っかかって思い立ったら、すぐやってみるっていうのはいいような気がしますね。

「ボーン」(掛け時計の音)

山口)お、ちょうどおさまった!いい対談だった~。

細井)ほんとですか?後で聞いたら恥ずかしそう。

山口)いや、めっちゃいい話してましたよ。

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